「1Q84」と、届けたい思い

しばらく余韻に浸っておりました。



読んでいる間は、ますます猛威を振るう村上春樹節に苦戦して、早くこの世界から抜け出したい、と激しく思っていたのが、最後が近付くにつれ、まだこの世界に浸っていたい、という思いに変わってしまい、読了してしまってからも、何度も少し戻っては読み返してみたりしてしまいました。


こんな気持ちで小説を読んだのは久しぶりです。


言い出せば色々なくはないけど、でも読んで良かった。
スイーツも
抜け出したいと思いながらも、至福の時間を過ごしました。



私の場合は、それは恋愛とは言えないのだけど、丁度10才の時、既に大人だったその人に「SABAちゃんのことは一生忘れません。いつでも連絡ください」と、下宿先と実家の連絡先を渡されたのに、お別れしてそれきりになってしまったままの人がいます。



その人がくれた銀メダル。
とある陸上の大会で取った金メダルをプレゼントしてくれたのを、遠慮して「金より銀の方が好き」と言って、前に取っていた銀メダルと交換してもらったものを、最後にもらった手紙と一緒に大切にしまってあります。

お別れしてから、私は日常に戻るのに必死で、手紙を書く勇気も余裕も無くそのまま大人になってしまい、大人になってから手紙を読み返したときに、連絡を取らなかったことをすごく後悔しました。



私は子供だったけれど、その手紙は子供に宛てられたものじゃなかったから。

ひとりの人間として、大切に対等に受け入れてくれていたんだということに大人になってから改めて気付いて、心が痛くなりました。



ずっと心に引っかかったままです。

でも、思い出のままにしてあります。



私は子供だったあの頃の私とは違う。




美しい思い出をむやみに壊しちゃいけないと思うしね。




ただ、私がこんな風に感じている、心から感謝しているという事を、その人がどこかで感じてくれたら良いなあと思う。



難しいことかもしれませんが。



ノルウェイの森」では人生を終えてしまった人たちを思い出し、「1Q84」では出会ってきた人たちを思い出して、また心の中にひとつ、何かが残りましたよ。

1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2