「佐藤雅彦研究室 カンヌ短編プロジェクト」

佐藤雅彦研究室 カンヌ短編プロジェクト』@ユーロスペースに行ってきました。


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研究室を母体とした「c-project」で作られた「八芳園」(2014年/12分)、「父 帰る」(2016年/34分)、「どちらを」(2018年/14分)の3本の短編映画と、初日は上映後に5人の監督さんによる舞台挨拶とトークもあり、映画もトークも面白かった。


八芳園」の、結婚式の両家のご挨拶と記念撮影の何とも言えない心許なさは、昨年10月に身内の結婚式に行ってきたので記憶に新しい。
歓談も程々に、準備が整うまでただ待つしかない「退屈な時間」をスクリーンで一緒に体感することがこんな風に面白みがあるとは新鮮!


「父 帰る」は、菊池寛の有名な戯曲ですが、この短編映画ではキャスティングのオーディションの様子を追って、長男役11名、母役15名、弟役14名、妹役9名、父役8名を含む、総勢63名の役者さんの映像記録を1本の物語に編集して作られていました。


何人もの役者さんが出てくるのに、兄の存在は兄として、母の存在は母として、だんだん違和感無くひとつの物語として見えてきました。文学的没入体験を試みる作品だそうで、役のイメージが1人の役者さんによって固定される前に入れ替わって、それぞれの役者さんの個性が意味をなさなくなって役の記号みたいになっていくのが面白かったです。


最後の「どちらを」は、実の父親を知らずに育った息子と、その父に会うかどうかを選ばせようと旅に誘った母の話。4つの選択が出てきてどちらかを選んだのかは分からないが、どちらかを選んだことははっきりしている、そのようなはっきりとした中途半端な分かり方もある、とのこと。
短いけど余白が一杯あって余韻も残る不思議な後味でした。エンドロールにも何回か出てきた、道が分岐してまた1本に戻っている絵のように、どちらかを選んだことは間違いないけど、どちらを選んだかは分からないしどちらを選んだとしても結果大差無い、というなら、その選択はどっちでも良いということになっちゃうけど、まあ、考えさせる事が目的だろうからそこは良いのか。


こちらはメイキング・ドキュメンタリーを作成中らしく、何かのきっかけで人がジャンプした瞬間が見られるそうです。


人がジャンプする瞬間は、私は人生で2回しか目撃した記憶が無いので、そのメイキングには凄く興味があります。その瞬間が映像に残されるって狙って出来ることじゃないから奇跡だと思う。
今後ユーロスペースで本編上映後に流される予定だそうです。もう一度、上映されるようになったのを確認してから行こうと思います。上映後のイベントも、今後も色々あるみたいです。


原案はこちら。


新しい分かり方

新しい分かり方